正面から戸を叩くのみにては、決して道は開けぬぞ(2)
守護霊一問一答 ①
◆万事に後ろ向きの相談者の姿勢に、守護霊様から叱責が飛ぶ
松田そうなのですか!私は自分の家の御先祖様のことはまるで知らないのですが、そうなるとつまり貴族か武士だったということでしょうか?
守護霊さようである。武門の家柄とは言い難きところはあるが、詩歌管弦(しいかかんげん)の技に優れた一門ではあった。
松田それって歌を詠んだり、楽器を演奏したりっていうことですよね。じつは私、学生時代にバンドをやっていてプロからスカウトされたことがあるんです。守護霊様、バンドってお分かりになりますか?
守護霊存じておる。民百姓の楽しむ、田楽踊りのごときものであろう。何よりわらわは、なんじが生まれしみぎりよりその身を案じ、見守ってきたのじゃ。知らぬはずがなかろう。
松田そうですよね。でも、結局は自分で諦めちゃったんですよね。自分の才能に自信がなくて……。
守護霊事ある事に過去を悔い、消沈する。考えずとも済むことをわざわざ考え、気に病む。それはなんじの悪しき癖であるぞ。
松田はい……たしかにそれはありますよね。自覚してます。後ろ向きなんですよね、私って。
守護霊自覚あるならば、速やかに直すべし。前のみを向いて生きるのじゃ。
松田でも、どうすればそうなれるのか……。
守護霊御仏の御力にすがるも一案なるぞ。何ぞ気落ちすることあらば、その度ごとに写経に励み、写し終えたると同時にすべて忘れるのじゃ。写したる経文は仏閣に納めるが良かろう。要は忘れる技を身につけることじゃ。忘れえぬわだかまりは妄念となりて、この先も変わらずなんじを苦しめ続けるぞえ。
◆行き詰まった仕事関係の打開策は、柔軟性を持つことと諭される
松田写経ですか。うーん、今度やってみます。それと私、今……。
守護霊人を動かす術が見つからぬこと、人が我が意の通りに動かぬことを、気に病んでおるのであろう。
松田そうなんです。会社の部下を上手く扱えなくて、とても悩んでいます。私のプロジェクトにいる部下の何人かに、私の下では働けないって部長に直訴されてしまって今、上と下から同時に突き上げられている始末です。このままじゃ降格されるかもしれないし、下手をしたら仕事自体を失ってしまうかもしれません。
守護霊また、悪しき癖が出たようじゃな。過ぎたことを気に病む、その癖じゃ。
松田はい、すみません。でも……。
守護霊なんじは良きにつけ悪しきにつけ真正直すぎる。この世というものは、ただ正面から戸を叩いたとて、素直に開けてくれる者ばかりではない。時には裏木戸に回り、あるいは庭手に回りつしてこそ、先へ進む道も見つかるというものじゃ。人も事も臨機応変に捉えよ。それが世を生き抜く人の知恵なるぞ。また、野山に群れなして棲まう、狼なり猿なりを見てみるが良い。群れの一匹一匹がその頭(かしら)に従うのは、いかなるゆえか分かるかの。
松田うーん……。<しばらく考えた後、おずおずと答える>群れのリーダーが、食べ物と安全を保証するからでしょうか?
守護霊さようなり。
松田つまり私には柔軟性とか、他人を包み込む度量とかが足らない、ということでしょうか。
守護霊いかにも。己が過ちに気づいたのちは、速やかにその行いをただすべし。しかれば必ずや道は開かれよう。
松田はい、分かりました。具体的にはまだ良く分からないけれど、何とかやってみます。
守護霊我が戒めを肝に銘じ、日々、これを行いに移すならば、三歳(みとせ)のうちに必ずやすべて上向く。心して励むが良い。