第32回くらやみ坂
(神奈川県)
首を切られてさらされた罪人の霊が、
道行く人に祟りをなす?
目撃談多数!真夜中に宙を飛ぶ生首の真相とは!
今回取り上げるのは、大都市横浜の中心部、市街地にある「くらやみ坂」です。坂を含んだその一帯はかつての処刑場跡で、怨念を持つ当時の刑死者の霊が出るというのですが……。
- 所在地
- 神奈川県横浜市伊勢町3丁目287
- 危険度ランク
- B ★★☆☆☆
先日、横浜の中華街にオフィスを持つ友人の元へ遊びに行った際、期せずして近辺にある心霊スポットの話を聞きました。「西区役所の近くに幽霊が出る坂があるらしいよ。その辺は昔の刑場跡で、たまに首を切られた罪人の霊が出るんだって」。これは行くしかないと思い、道順を教えてもらってさっそく出向きました。目的地は横浜市西区西戸部3丁目と伊勢町3丁目 の間から 伊勢町1丁目へ至る坂道で、その名称は「くらやみ坂」。地名の由来に関しては諸説あるそうですが、この坂の上から見る富士山の景色がかつて大変美しかったため、旅人が必ず馬を止めたところから「鞍止み坂」と呼ばれるようになったという説。あるいは昔、付近一帯には鬱蒼とした木々が生い茂って昼でも夜のように暗かったので「暗闇坂」の名が付いたとも言われています。
なお、この場所で噂される心霊現象は次の通りです。
- 坂の上には、明治時代の半ばまで罪人を収監する戸部牢屋敷があり、処刑場も兼ねていた。その刑死者たちの怨念が今も残り、月のない真夜中に付近を通ると磔獄門にされた血みどろの霊が現れる。
- 同様に、宙を飛ぶ生首を目撃した人が多数いる。
- 坂の石標の裏手に建つ刑死者たちを祀った2つの小さな祠付近に、かげろうのようにぼんやりとした人影が現れることがある。
戸部牢屋敷とは、横浜開港直後の安政6(1859)年に開設された監獄で、明治32年に根岸へ移転したそうですが、当時その場所で重罪人や政治犯などの処刑が行われていたのは歴史的事実のようです。幕末に英国士官が斬殺された「鎌倉事件」の首謀者もこの地で斬首され、さらし首になったと伝えられています。
さて、現地に着いたのは夜の10時を回った頃。なだらかな勾配の両側には、ごく普通の住宅街が広がっているだけでした。もちろん街灯もきちんと整備されていて、まばらながらに人通りもあって、暗くて怖いという印象は皆無。ここが心霊スポットだと言われても、ほとんどの人はピンと来ないと思います。徒歩で坂を登り切ったのですが、途上にあるふたつの祠でも何も感じ取ることはできませんでした。怨念を抱いた霊体の類も一切見えず、拍子抜けの結果となった次第です。
ただし、ひとつだけ気になることがあります。心霊スポットとして関心を集める土地にありがちなことなのですが、興味を抱いて訪れる人々の意念が人工的な霊を作り出してしまうという現象が起こることがよくあるのです。この坂の付近でも現在その現象が起きつつあり、それらしき微弱な想念波動は何度か感じ取れました。もし今後、面白半分に取り上げられるような事態が続けば、本当に生首の霊が飛ぶようになるかもしれません。
ちなみに牢屋敷移転の際には入念な供養の儀が執り行われたようで、刑死者の怨念などは全く残存していません。近辺にお住まいの方はどうぞご安心ください。